合成したラベンダーの香りの商品が巷では溢れています。よく販売されているエッセンシャルオイルの「ラベンダー」は、果たして正しい学名ではどのようなものが含まれているのか分りません。 ラベンダーは学名で分類すると、野生ラベンダー・ラベンダー指定栽培・ラベンダー有機栽培・ラバンジン・ラバンジンスーパー・ラベンダースピカ・ラベンダーステカス など多くの種類があり、性質もことなってきます。
〜 anjuu アンジュー 〜
守備範囲の広い野生ラベンダー
最もなじみが深く、アロマテラピーに欠かせない精油の一つがラベンダーです。ラベンダーは薬効の範囲が広く、危険性が少なくて使いやすい精油ですが、精油の原料となるラベンダーには学名の異なる6つの種類があることをご存知でしょうか。
日本では北海道の富良野がラベンダー産地として有名ですが、背丈が1m近くあるラベンダーは正確にはラバンジンと呼ばれる種です。これは真正ラベンダーとラベンダースピカの交雑種で、その精油は真正ラベンダーの精油とは似て非なるものです。
しかし、ラバンジンの精油がラベンダー製油として売られたり、真正ラベンダーの精油がラバンジン精油で希釈されて売られたりしていることが多いので注意が必要です。精油には原料植物の学名が必ず明記されていなければならない理由がここにあります。
では、学名別に精油となるラベンダーについて見ていきましょう。まずLavandula vera(ラベンダー野生)です。野生のラベンダーはフランス・プロバンス地方のカルキ質が多い、標高1800以上の高い岩山に生えています。群生せず、ところどころに少しずつ生えていますから、収穫に相当の手間がかかるため、精油の値段もラベンダーの中では最も高いものです。降雨量や日照などの自然条件に大きく左右される為、収穫は不安定で、数年間も精油が供給されなかったこともありました。
この貴重なラベンダー野生の成分構成は、栽培種では再現できない微妙で特異なものです。最先端のアロマテラピーでも、何を使ったらいいのか分らないときにはとにかく野生ラベンダーを使えといわれるくらい様々な薬効を持ちます。ラベンダー野生には毒性がほとんどないので、免疫力が低下している人でも安心して使用できます。ただ、量産できないラベンダー野生は供給が需要に追いつきません。また、高価なために日常的には使用しにくいという難点もあります。
そこで、ラベンダー野生の代替品として使われるのが、標高の高い地域(800〜1100m)で栽培されたラベンダーです。これは、「ラベンダー有機栽培」「ラベンダー指定栽培」などの商品名で販売されている、通称名が真正ラベンダーの精油です。学名は、Lavandula officinalisもしくはLavandula angustifoliaです。Lavandula officinalisもLavandula angustifoliaも、特徴的な成分は酢酸リナリルとリナロール。標高が高いほど酢酸リナリルの含有量が高くなる傾向があります。
別表のように酢酸リナリルの含有率についてみると、野生のラベンダーと800〜1100mで栽培されたラベンダーは限りなく近いことがわかります。ラベンダー野生と真性ラベンダーの品質を見る場合、この酢酸リナリルの含有比率がリナロールのそれよりも高いほど良質であるといえます。リナロールのほうが多いものは避けたほうがいいでしょう。ラベンダー野生の標準的なリナロール含有率は20から30%です。これよりも高いものは、たとえ野生のラベンダーを原料としていても、標高の低いところで採集されたか、蒸留が適切に行われなかったことを示しています。
厄介な成分クマリン
このほか、ラマシャンティ・アロテラピー研究所ではラベンダーに含まれる特徴的な成分としてクマリンをあげています。しかしクマリンは微量しか含まれていないため、ガス・マス分析においても痕跡程度にしか検出されません。分析技術者の腕が悪いと、含有していても検出されないことがあるようです。
医療用精油の代表的なラボラトリーであるフィトサンアロームにおいても、分析責任者であるスーリエ博士は、クマリンが検出できないラベンダー精油については何回か分析を繰り返し、それでもクマリンが検出されない場合は返品すると明言しました。いずれにしてもクマリンの含有率(%)は、小数点以下2桁というレベルです。この微量成分がラベンダーの作用の特長である鎮静作用や抗痙攣作用をもたらせてくれるのです。
3つめと4つめのラベンダーは学名が同じLavandula hybrida、通称名は前出のラバンジンです。ラバンジンは香りが真正ラベンダーと酷似しているので、しばしば間違われます。このラバンジンは、学名は同じでも特徴的な成分の違いでLavandula hybrida clone abrialisとLavandula hybrida clone superの2タイプがあり、それぞれ「ラバンジン」「ラバンジン・スーパー」の商品名で流通しています。
前者の特徴的な成分はリナロール、酢酸リナリル、カンファー、後者は酢酸リナリルとリナロールです。2タイプのうち一般に用いられるのは「ラバンジン」ですが、これにはリナロールが多く含まれているため、真菌を含む皮膚の感染症を予防したり、血液循環を促して疲労を回復せせるような作用があります。例えばスポーツの前後に行う筋肉のマッサージには、Corylus avellana(ヘーゼルナッツ油)大さじ2にLavandula hybrida clone abrialis3滴、Rosmarinus officinalisBS1,8_シネオール(ローズマリー・シネオール)3滴をブレンドして用います。
ケトン量が多いスピカとステカス
5つめのラベンダーは学名をLavandula spica、通称名を「ラベンダースピカ」といいます。特徴的な成分はリナロールと1,8_シネオール、それにカンファーも多く含まれているため、感染症の治療に有効です。
また、気管支や肺の比較的重症な感染症や真菌の治療、また心臓の強化剤としても使われています。ケトン類のカンファーは微量の使用で血圧を下げる効果があり、多すぎると逆に上昇させてしまうので要注意。
6つめは学名Lavandula stoecas、通称名を「ラベンダーステカス」といいます。1,8_シネオールのほかに、ケトン類のカンファーとフェンコンを特徴的な成分として持っています。ケトン類は神経に対する毒性があり、多量に吸収すると意識を失うこともありますから、スピカと同様に細心の注意が必要です。
ステカスもスピカも流産の危険がありますから、妊婦の使用は不可です。ラベンダースピカとラベンダーステカスは、医療用というべき精油です。医師や薬剤師などの医療従事者の指導下で使うようにしてください。ラベンダー野生と真正ラベンダー、それにラバンジンは前述のように酢酸リナリルを特徴成分としています。この成分は皮膚から吸収させるのが最も効率のいい摂取方法です。内服しても毒性はありませんが、有効成分がほとんど失われてしまいますから。塗布やマッサージ、芳香浴、アロマバスが最適です。
成分の数値はパーセント 『アロマテラピーへの招待』より抜粋 |