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水銀はどこからくるのか
 

 

私が最初に毛髪分析を受けたのは約20年ほど前になります。レポートを見てまず驚いたのが、有害ミネラルの水銀の値が非常に高かったので驚きショックを受けました。オフィスでも沢山の方々がこれまで毛髪分析を受けられましたが、皆様当時の私と同様驚かれる方がほとんどです。しかし、私はそのようなレポート結果を見ても今では驚くことがなく、むしろ当然といった感じでいます。どうしてなのか不思議に思われるかもしれませんね。

〜 anjuu アンジュー 〜

●水銀はどこから来るのか

毛髪分析に関して最も多い質問に、「なぜ、水銀が私の体の中にあるのでしょうか。」ということがあります。
水銀は地球の環境を循環しています。地表からは絶えず蒸気となって上昇し、また産業活動によって大気中に放出されます。大気中の水銀蒸発は雨に洗い流され、河川によって最終的には海に運ばれます。そして、海水に溶け、生物濃縮を経て有害なメチル水銀に変化していくのです。

水銀の世界での分布は一様ではなく、火山国でしか産出されません。火山に多い硫黄に水銀との親和性が高いことがその理由なのですが、日本は世界有数の水銀産出国でした。

「丹」という言葉は硫黄水銀を意味しており、日本には水銀にちなんだ「丹生」と いう地名が数百個所もあります。さらに 丹生(ニウ)の音から、入郷、荷尾、壬生などの地名が生まれたとのことです。高井雄(工学博士)著「水の中の有害元素 (研成社刊)によると、いずれの土地もそこから水銀が産出されたか、あるいは水銀採掘職人が住んでいたなど水銀に縁 があるとのことです。

水銀は目に見えないけれど、口に入れる食べ物も含めて身の回りのさまざまなところに存在しています。そして、義歯と して、体の一部とさえもなっています。

●重金属はなぜ毒か

水俣湾近辺の住民に生じた四肢のしびれや言語障害などの症状の原因が水銀の汚染であることが確かめられるまで、長い時間が費やされることになりました。そして、1860年までに総患者数にして2842人、死者にして946人もの犠牲者を出すに至りました。

イラクやメキシコ、ブラジルなど外国でも大規模な水銀汚染が起こっていますが、水俣病はそれらに比べても空前の水銀中毒です。 昭和30年代には殺菌殺虫効果のあるフェニール水銀農薬が用いられ、水俣病のような深刻な被害は起こらなかったものの、土壌を広く汚染することになりました。

また昭和49年まで水銀法によるカセイソーダの製造が行なわれ、日本の工業地帯に近い各地域から基準値を超える濃度の水銀(水銀だけではなくて、鉛や砒素、トリクロロエチレンなど化学物質も) が検出されています。

このように水銀はいたるところにあり、日本に住む人の毛髪中の水銀濃度は、外国に住む人に比較して非常に高いものになっています。

水銀には強い殺菌作用があり、それゆえに殺虫剤や殺菌剤に使われていました。水銀イオンには、微生物の酵素のタンパク質部分のSH基と結合し、その酵素の活性を阻害する働きがあります。「赤チン」の通称で親しまれたマーキュロクロムは水銀の化合物で、子どもの手足の擦傷や切傷によく使われ、雑菌の繁殖をよく抑える効果がありました。

微生物の酵素の活性を阻害するということは、多細胞生物の細胞にとっても水銀が毒であることを意味しています。水銀のような重金属が細胞にとって毒である理由ですが、生物が海に含まれているミネラルを利用して誕生するとき、底の方に沈んだ水銀や鉛を生体の一部として利用することができなかったことではないかといわれています。

微生物も含めて生物には重金属を利用する遺伝情報がなく、細胞に入り込んだ重金属はその重量にものをいわせて、酵素活性に必要な必須ミネラルを追い出してしまうのです。
重金属は、化学物質と結合したとき、その毒性をさらに強いものとします。自然界おいて硫黄と結合することで安定している無機の水銀も、化学物質と結合した有機水銀になることにより油に溶ける性質(脂溶性)を獲得し、人体に蓄積し、脳の関所である血液脳関門さえ通り抜けてしまうのです。

●水銀中毒の範囲

ドクターズ・データ社の毛髪分析では、予防医学的な意味で1、5PPMに基準値を置いていますが、毛髪分析を受ける 9割以上の人からその基準値を上回る水銀が検出されます。

水俣病の患者の毛髪からは、50PPM以上の水銀が検出されていました。1991年に水俣病研究班が報告した東京都民の毛髪中のメチル水銀の値は4、29PPMでした。杏林予防医学研究所で受け付けている毛髪分析の被検者の平均的な値は、3〜5 PPMの幅に入っていることが多いようです。

世界保険機構(WHO)の指針として、20PPM以上検出される人に水銀中毒症の危険があります。水銀が体内にあるので、驚かれることが多いのですが、もちろん5PPM以下の数値で水俣病のような神経障害が起こることはありません。

しかし、小規模ながら、水銀により細胞呼吸に必要なSH基と亜鉛酵素の破壊が引き起こされ、眠気や物忘れ、慢性疲労、いらいら、免疫力の低下など、原因不明の多 くの症状の原因が水銀である可能性があります。

またWHOは、妊婦の毛髪分析値が10〜20PPMの範囲内だと胎児に影響する可能性があると警告しているので、子供をもつ希望のある女性は妊娠する前に毛髪分析で水銀の所在を明らかにし、杏林予防医学研究所が勧める解毒法を行なうとよいでしょう。

●食品と水銀

水銀には有機と無機があり、無機水銀の腸からの吸収率が10%くらいなのに対して、有機水銀はほぼ100%吸収され、非常に強い毒性を持ちます。 有機水銀を最も多く含む食品は、大型マグロです。同じ魚介類でも、いわしには有機水銀がまったく含まれないのに、大型マグロには100g当りにして、1 39mcgもの有機水銀が含まれます。また牡蠣(かき)も、有機水銀は含まれません。

食物連鎖のために、生体系の上位の生物の体内に水銀が濃縮されます。PCB汚染により、北海のアザラシが大量死した事件も、アザラシが最終捕食者であったことによります。有機水銀やPCBは脂肪に蓄積されるので、マグロの目玉から抽出したDHA補助食品にはそれらの有害物が残留している疑いがあります。

マグロ以外の魚介類では、カジメ、キンメダイ、サメ、カツオ、スズキなどに水銀が多く含まれます。地域的、地理的条件による差はありますが、サケ、マス、ニシン、サンマ、アジ、イワシ、キス、エビ、カニ、イカ、タコ、アサリ、シジミ中の総水銀は、1PPM以下です。

よく、「腕よりも小さな魚を食べなさい」といわれるように、良質のタンパク質、 脂肪、ミネラルの摂取源としての魚は、サンマまでの大きさか、汚染の少ない地方で獲られるサケが適当と思われます。

穀物には、天然由来の水銀の他、残留農薬や鉱山からの流水から運ばれてきた水銀が含まれます。会食などで年に数回食べることのあるマグロの刺身にはそう神経質にならなくてもよいのですが、毎日の主食である米など穀物は、汚染の少ない安心できるものを購入したいものです。

野菜類にも農薬の影響からか水銀が含まれますが、有機水銀に関しては無視できる量であるといっていいでしょう。

●アマルガムの影響

日本人のほとんどは歯医者に通院した経験があり、日本人に多い近眼と虫歯はカルシウム欠乏から来ているものと考えられています。そして、虫歯を削って、患部に埋められる水銀アマルガムが、日本人の体内に水銀を増やしている大きな原因と考えられます。

カナダ・カルガリー大学が行なった実験で、6頭の雄羊の歯12本にアマルガムを詰めたところ、2ヶ月以内に腎臓の機能が16〜80%も低下したと報告されています。また1987年にスウェーデンのカロリンスカ研究所が行なった人体解剖調査では、水銀アマルガムを詰めた人はそうでない人に比べて脳に3倍、腎臓に9倍も水銀が取り込まれていることがわかりました。

そのような実験結果から、スウェ−デンでは1994年からアマルガムの使用を全面的に禁止しています。しかし、アメリカでは規制する動きが出ているものの、動物の実験結果がそのまま人間に当てはまるとはいえないので、有害な物質を取り除くという意味でアマルガムを除去することは医療論理に反するという見解がとられています。

アマルガムの材質に使われている水銀は吸収率の低い無機水銀であり、あまり心配 はないという意見の根拠になっているのですが、水俣病がそうであったように口中の微生物によって無機水銀が有機水銀に変化する可能性を否定することはできません。

「インターネット情報医療(たま出版刊)」には、食べ物を噛んだり、熱いものを飲んだりすることによって、口の中で水銀が気化し、体内に吸収され、8本の歯にアマルガムを詰め込んでいると毎日10mcgの水銀が吸い込まれ、ガムを噛んだり、歯ぎしりをする癖があると、その10倍の量を吸収する可能性があると書かれています。

近年アメリカでは、アマルガムに含まれている水銀が自己免疫疾患、慢性疲労症候群、アレルギーなど免疫の異常を生じさせていると報告されています。仮にアマルガムの危険が少なくても、水銀が有害物質であることは事実ですから、体の中に存在しているということはまったく好ましくないのです。

水銀と同時に、銀とスズが毛髪から検出されるとき、アマルガムが人体に影響を及ぼしていると考えられます。ただし、金属アレルギーの人は少量でも、より強い影響を受ける可能性があります。

しかし、仮にアマルガムをはずすとして、歯に詰めるときと同様に、まとまった量の水銀を体に取り込んでしまう危険があります。アメリカでは、治療時での水銀の吸収を防ぐ処置が研究されているそうです。

外す必要性があるときは外して、保険が効かなくとも安全な詰めものに替えるとして、正しい処置が期待できないわが国では「触らぬ神に崇りなし」と考えるほうが 無難かもしれません。つまり、体内からの解毒が最善の策であるといえます。

●水銀の増えやすい人のタイプ

日本人は平均して、毛髪中の水銀値が3〜5PPMの範囲にある人が多く、3PPM以下の人は心配ないとはいえるものの、やはり水銀の値が低いに越したことはありませ ん。
5PPM以上出ている人は、全体の5割弱くらいです。それらの人の傾向として、次のことが上げられます。

1. 健康な人はほとんどいない
2. 高年齢者に多い
3. 糖尿病、肥満の傾向にある人に多い
4. 女性では無月経、月経困難、子宮内膜症、冷え症が多い
5. 男性では、脱毛が多い
6. アトピー、乾癬、にきびなど皮膚病の人が多い

何かの疾患のある方が毛髪分析を希望することが多いのですが、最近、ある大学の研究グループが数十人ほど毛髪分析を受けたところ、健康な20歳前後の学生には水銀を含めた有害ミネラルがほとんど高値にでませんでした。しかし、40歳以上の方からは、水銀が高値以上の値で検出されました。 しかし、40歳以上の方からは、水銀が高値以上の値で検出されました。

水銀が不調の原因になっているか、不調のために水銀が増えやすくなっているか、何ともいえないところですが、水銀が多いことが、体内での生理作用が円滑に進んでいないことを示していることは確実であるといえます。

●亜鉛の消耗による症状

水銀高値にある人は、あるパターンの特徴あるデータが出てくることがしばしばです。

・水銀高値―亜鉛が要改善高値以上
体内での亜鉛のレベルが低いと毛髪の伸びが遅くなり、そこへ亜鉛が濃縮されます。その結果、毛髪中の亜鉛濃度が高くなり、体内で水銀が亜鉛含有型酵素の活性を妨害していることが考えられます。

[亜鉛不足による症状]

脱毛、味覚障害、風邪にかかりやすい、インポテンツ、 生理不順など排卵にトラブルがある、皮膚病が治りにくい、 傷がなおりにくい、記憶力の低下、にきび、ガンの心配、 貧血

亜鉛の働きはタンパク質の生合成にあるので、亜鉛不足により各細胞の修復が遅れ、その組織の機能低下に関係します。その結果、脱毛や皮膚のトラブルが起こります。

また亜鉛が不足していると、免疫に異常が起こります。Tリンパ球には免疫を賦活するキラー細胞と抑制するサプレッサー細胞がありますが、そのバランスが崩れると、アレルギーや自己免疫疾患(膠原病、リューマチ)が発症します。亜鉛はリン パ球の微妙なバランスをとるのに必要なミネラルです。

インシュリンの活性にも亜鉛は必要であり、、その不足により糖尿病の心配が出てきます。糖尿病患者には肥満者が多く、体脂肪が多いと有機水銀が蓄積され、それが亜鉛の消耗を招いていることも、糖尿病の発症に関係している可能性があります。

またビタミンAは亜鉛なしでは機能できないで、亜鉛不足により夜盲症などビタ ミンA欠乏の症状が起こります。

●水銀を相殺するセレニウム

・水銀高値―セレニウムが要改善高値以上

セレニウムは水銀と複合体を作るこ により無害化する働きがあります。データで、セレニウムと水銀がともに高く出 いるケースは、セレニウムと水銀が体内で拮抗しているためと考えられます。

千葉大学薬学部が行なった実験で、ネズミに塩化第二水銀を与えたところ、七日目に全部死亡したのですが、同時にセレニウムを与えた群は全部存在していました。メチル水銀を与えた実験でも同様に、セレニウムを与えられた群には生存するネズミが見られました。
生存していたネズミを解剖すると、肝臓から、死亡したネズミの6倍以上の水銀が存在していました。この水銀はセレニウムと結合することで脱メチル化されて無毒化し、尿や糞からではなく、呼気から排泄されたと考えられています。

マグロには水銀が多く含まれるのと同時に、セレニウムも多く含まれます。海の生物には、水銀に曝されているほど、セレニウムを多く吸収し、それを無害化しようとする特徴があります。

毛髪中のセレニウムが高い場合、水銀の毒性を軽減していると考えられます。反対に水銀が高値なのにセレニウムが低値であると、水銀の毒性を強く受けている可能性があります。セレニウムは過酸化脂質の消去に働くミネラルなので、その欠乏により、ガンや心筋梗塞になるおそれがあります。

●含硫アミノ酸の指標としての硫黄

・水銀高値―硫黄が要改善低値以下

硫黄を含むアミノ酸のシスティンから合成されるメタロチオネインには、有害重金属を捕捉する重要な働きがあります。

また硫黄(S)はセレニウム(Se)と、「−S-Se-S-」という結合部分を作り、水銀や砒素、鉛、カドミウムの無害化隔離を行ないます。メタロチオネインは細胞質 あり、カドミウム、水銀、鉛、銀、銅、金などの金属イオンが存在するとそれらの重金属と結合し、爪や毛髪からの排出を促進します。

自然界おいても、水銀と硫黄は結合することで、安定が保たれています。ちなみに、「錬金術」は、水銀と硫黄から金を造りだそうとする研究であり、有名なニュートンを始め、錬金術に携わった‘学者‘はしばしば水銀中毒になりました。

しかしながら、安定した硫化水銀も加熱することにより、水銀蒸気と二酸化硫黄の二つの有毒物質を作り出します。そのため朱肉も含めて、電池など水銀を含む物質を焼却すべきではないのです。

硫黄の摂取源として、必須アミノ酸のメチオニンが摂取されていれば、マグネシウムや亜鉛、ビタミンB6の作用によって、システィンが合成されます。

動物に含まれているタンパク質にメチオニンが豊富ですが、にんにく、たまねぎ、 にら、アスパラガス、ねぎ、ブロッコリーなどからも硫黄をとることができます。

●水銀が高値に出ているときの対処法

何かの病気をこじらせたり、体調が悪くなっている場合も含めて、予防医学的な意味から、体内の水銀を排泄、あるいは解毒することが望ましくなります。

一つは、化学的な作用による解毒です。水銀と拮抗する栄養素を補助することですが、その栄養素として、含硫アミノ酸、亜鉛、セレニウム、ビタミンCなどがあります。

「有害ミネラル排泄サプリメント・デクアシン」は、含硫アミノ酸を主成分に、有害金属によって失われやすい亜鉛、鉄、マンガン、銅などのミネラルと、有害ミネラルの無毒化に効果のあるビタミンCが含まれます。

また水銀により発生するフリーラジカルの抑制に、ビタミンE,ベータカロチンなど抗酸化栄養素が働き、脳や神経系に与えられるダメージを最小限にします。ビタミ ンEには、セレニウムの作用を強める働きも期待できます。

もう一つは、消化器系からの解毒です。ファスティングは、水銀など重金属も含め、すべての有害物質を解毒する最良の方法です。体脂肪を減らすことにより、有害物質が貯蓄されにくい体質に変わります。

乳酸菌は、大腸からの排泄量を増やし、有害物質が体内に長く留まるのを防ぎます。同時に、りんご、こんにゃく、ぬか、おからなど食物繊維に富んだ食品を摂る機会を増やすことです。

ダイオキシンなどもそうなのですが、水銀が体内に入って来ることを防ぐことは、残念ながら非常に難しいといえます。入ってきても、害を受けないようにするには、化学物質(添加物など)や脂肪、砂糖が含まれない食事と、サプリメントの利用、適度な運動を基本とします。汗をかくことによって、有害金属はある程度排泄されます。遠赤外線サウナや酵素風呂などの利用も勧められます。

育毛剤を使って、毛髪を成長させ、水銀を取り込ませることも一つの手段として考えられます。ヒゲの伸びの速い男性などは、毎日、水銀を剃刀で剃って捨てているのかもしれません。亜鉛不足ですと、毛髪の伸びが遅くなり、それだけ水銀の影響を受けやすくなります。

それから、身近な環境の問題に注意を払うべきです。本来は行政レベルで回収作業などの対応を急ぐべきであり、それに比べて本当に些細なことではありますが、乾電池や温度計、体温計などをゴミに出さないことです。蛍光管などもそれが割られた瞬間に、水銀蒸気が大量に放出されます。不用意に出したゴミが、あなたの毛髪中の水銀です。


「魚と水銀」を改めて考える

2003年6月3日の厚生労働省の勧告を受け、テレビ番組でも海産物と水銀の危険性について取り上げられていました。番組では、人の手による海洋汚染だけでなく、自然界に存在する水銀も、食物連鎖を通した生物濃縮によってあらゆる海産物に蓄積していることに触れる一方で、狂牛病やO-157などの騒動の際と同様、風評被害による漁業への打撃も相当に深刻であると伝えられていました。

また、妊婦及び胎児への水銀の影響についても分かりやすく解説されており、本来であれば、母体と胎児をつなぐへその緒や、脳を異物から守るための血液―脳関門には有害物質を取り込まないような制御機能がありますが、メチル水銀が体内でアミノ酸と結合すると、これらの器官をいとも簡単に通過して胎児の脳に蓄積する結果、生まれてくる赤ん坊の言語や知能に障害を伴うリスクが高まることが具体的に紹介されていました。

世界レベルで見ると、FAO(国際食糧農業機関)とWHOの合同組織で設定されている一人当たりの水銀耐容摂取量は1日換算でおよそ35.7μgとされています。一方、普段の食事でどのくらいの量の汚染物質を摂取しているかということについて、厚生労働省が2年前に実施したモニタリング調査によると、魚介類を含む食品由来の総水銀の摂取量は1人1日あたり約7.0μgであり(※うち魚介類からの摂取量は全体の約87%)、耐容摂取量の2割程度であるから心配ないというのが厚生労働省の見解です。

しかし、米国の環境保護庁が定める安全基準は、人の水銀摂取量について1日体重1kgあたり0.1μgまでとしており、この基準を日本人に適用するとかなり多くの人がオーバーすることになります。さらに、米国では独自の安全基準を設定する州が出てきているほか、カナダでは米国よりもさらに基準が厳しく、妊婦以外の人も勧告の対象としています。

冒頭で触れたテレビ番組でも、米・カリフォルニア州の大手スーパーで魚の水銀に対する警告をラベルに表示している様子が放映されていました。 こうしてみると、日本での今回の勧告は、何十年も前から海産物の水銀汚染について議論がなされてきた欧米諸国に比べると対応の遅さばかりが目立ち、その内容も非常に緩慢であることがよく分かります。

水銀をはじめとする有害物質の危険性について以前から警告し続けている当研究所からみれば、今回のように水銀の問題が大きくクローズアップされ、多くの人が関心を持つようになるのは確かに喜ばしいことです。しかし厚生労働省は妊婦以外への警告は一切行わず、「魚介類等は一般に人の健康に有益であり、本日(6月3日)の注意事項が魚介類等の摂食の減少につながらないように正確に理解されることを期待したい」とするだけです。

農林水産省のホームページでも、海産物に豊富に含まれるEPAやDHA、タウリンなどの効能を掲載して魚介類を積極的に食べるように推奨しています。漁業への風評被害を最小限にとどめようとするのは分かりますが、いざ消費者がどのように対処すればよいのかということになると、明確な情報を提供しようとする姿勢が政府にみられないのが残念です。

また、世の中に広まっている「魚は危険=食べるのをやめよう」という図式を政府が本当に懸念しているのであれば、海産物だけでなく野菜や穀物の残留農薬の問題、牛や豚に用いられる抗生物質等の問題などについてもさらに言及し、現在流通している食品すべてに対して同等の警告をすべきであり、それと同時に私たちが自らの意思で食品を選択するための情報をより正確に伝えるべきではないかと思います。

いずれにせよ、ありとあらゆる食品が何らかの形で汚染されているのが現状ですが、かといって毎日の食事からそれらを排除すると何も口にできなくなるわけで、体内への有害物質の蓄積を皆無にすることは現実的に不可能です。つまり、私たちが現時点で実行できるのはセカンドベストの対策であり、具体的には可能な範囲で有害物質の少ない食生活を心がけつつ、やむを得ず体に蓄積してしまった有害物質を排泄するための知識を身につけ、定期的に解毒することだといえます。

 (杏林予防医学研究所 予防医学ニュースより)